モータグライダーのタービン革命

via Wired "Sailplane Launches Itself With Retractable Jet"

アメリカ、ニューメキシコ州Desert Aerospace社では、モーターグライダーのエンジンとして超小型のターボジェットエンジンを使用する機体のテストが進んでいる。
この機体"Bonus Jet"はチェコ製の複座モーターグライダーTST-14のエンジンを自重45ポンド(約20.4kg)、推力240ポンド(約109kgf)のターボジェットエンジンPBS-TJ100に換装したものである。
 このエンジンはコクピット直後に配置されており、離陸時のみ使用され、それ以外では機体内に収納されている。燃料消費量は20ガロン(約25.7L)/時に達するが、高い推力のため離陸時のほんの数分間しか使用されない

 記事で取り上げられている機体の原型であるTST-14自体が、格納式のエンジンを備えた、極めてユニークな機体である。自力発進式のグライダーは、当然滑空中はエンジンを使わないので死重となり抵抗が増大する。特に抵抗の増大は揚抗比を悪化させるため、グライダーとしての致命的な欠点となる。このため格納式のエンジンを備えるものはいくつかあり、代表例がドイツのアレキサンダー・シュライハー ASK 21 Miであり、これには小型バンケルロータリーエンジンが背負い式に搭載されている。


 バンケルロータリー?そう、つまりこの記事の機体と同様の理由がそこにある。

 本質的に自力発進式のグライダーがエンジンを回すのは離陸時と、よほど高度を失った時だけである。従って燃費はさほど問題とならない。一方で重量は常に機体にかかり続けることになる。従って、より軽量かつコンパクトなエンジンが要求される。

 バンケルロータリーはその条件を満たすものとして選択されたのである。しかし、エンジン自体がいかに軽量とはいえ、プロペラとその支持部分を収納しなければいけないのは機体のスペース的に問題がありすぎる。アレキサンダー・シュライハーは支柱にラジエターを収めるなど、かなり工夫はしているが、それでも収納容積としてはエンジン本体よりプロペラの方が食っている。

 一方で、Bonus Jetは際立ってスペースを有効活用している。PBS-TJ100の直径は27.2cm、長さは48.5cmに過ぎない。しかもエンジンのみを露出すればよく、長い支柱は必要ない。格納式のエンジンとしては最適である。
 そりゃあ低速でジェットエンジンを吹かしても効率はこの上なく悪い(排気速度に対して対気速度が遅すぎる)。だが、どうにしろ運転時間は短く、かつ趣味で使う機体なのだ。

 最近、小型化さえ可能になれば世の動力装置の結構な部分がタービンエンジンに置き換わるんじゃないかと思っている。自動車の様に主動力として使用され続けるエンジンは実は少ないのではないか?実際、APU(補助動力装置)としてのガスタービンは既に普及している。
そんな詰まらぬことを考えつつ。