積層


SCAI THE BATHHOUSEの安部典子展“TIME LAG”
に行ってきた。

 安部典子の作品は紙を「手で」切り出して作り上げられている。一枚では平面の紙を一枚ずつカッターで切り抜いて重ねることで立体が立ち上がっていく。一見するとラピッドプロトタイプのようだが、製作過程としては明確に異なる。彫刻とも違う。
 よく見ると手で切ったブレがそこかしこに存在する。立体が先に存在しているのではなくて、積み重ねる過程で現れてくる(もちろんある程度のイメージは先にあるにせよ)。
重ねる紙の数は1,000枚を超えることもあるそうで、かかる手間を想像すると胸が熱くなるな

紙自体も通常の紙ではなく、「ユポ」というプラスチックの合成紙が用いられている。まあ、紙は伸びるしね・・・


 着想の元は地形図、というか等高線で、今回の展示でも実際の地形をモチーフにした作品があった。しかし、そうしたイメージから遊離した作品も存在する。
"Flat File Globe"シリーズはファイルキャビネットに積層された紙が収められた作品である。これによって作品は紙の塊としての印象が強くなるが、しかしその断面はやはり紙なのだ。