大豆による接着

Via Gizmag "Tofu ingredient used to create formaldehyde-free plywood glue"

ウィスコンシン州の米国農務省Forest Products Laboratoryでは、環境に優しい大豆由来の木材用接着剤を研究している。
 大豆たんぱく質から作られるこの粘着性物質は、石油由来の接着剤と同等に強力で、有毒な揮発性の成分を持たない。このプロジェクトに参加しているCharles Frihart博士によると、たんぱく質由来の接着剤は20世紀初頭には合板製造などに広く用いられてきたが、コストなどの理由で後に石油由来の製品に置き換えられた。しかし、環境問題や技術的進歩によって再び復活を遂げた。Frihartの目標は現在のものよりも強力な大豆由来の接着剤を開発することである。
 大豆由来の接着剤は現在石油由来の製品の市場の5%以下を占めるに過ぎないが、この研究によって世界中で「グリーンな」接着剤の使用が広がることが望まれている。

 石油由来の溶剤が有害であるとして、植物製品に置き換えが進んでいる例としては、印刷用のインクが挙げられる。大豆油インキは石油系の製品の代替として広く使われている。もちろん全く問題点が無い訳ではなく、リンク先にあるように1)乾燥が遅く、紙質を選ぶ 2)コストがやや高い、など完全に代替できるわけではない。それでも環境コストが重要視されていることで使用が広がっているらしい。

 合板や家具用の接着剤も正に室内で使われるわけで、当然揮発成分は少ないに越したことはない。またこのニュースが面白いと思った理由の一つは、これがある種復刻である点である。たんぱく質系の接着剤としては牛乳から製造されるカゼインが今でも使われているし、WW2の傑作爆撃機de Havilland Mosquitoの初期生産型もカゼイン系接着剤を使用していた。また木材用の接着剤で最高級のものが使われたのは航空機とピアノであり、実はWW1頃まで両者は共通点が多かったのだ。この辺は近代ピアノ技術史における進歩と劣化の 200 年(PDF)が常軌を逸して詳しい。

 ただ結局は合成樹脂に比して耐水性に劣り、使いにくく(添加剤などの配合が微妙で硬化にも時間がかかる)、強度的にも劣るため使用されなくなってしまった。

 さて、大豆たんぱくは恐らく、牛乳から作られるカゼインよりはコスト的に優れているだろうが、何より使い勝手の向上がなければ辛いような気がする。例えばエポキシ並みに「チューブから出してすぐ使える」状態で販売できれば、一定の市場は確保できるんでなかろか。
 室内でもVOC汚染がここまで問題化される昨今、建売住宅などの売り文句としては「植物由来の低VOC住宅」は最適だろうと思われる。