メイドさん大暴走

Via The Star Online "Indonesian maid stomps infant to death"

Puchongでインドネシア人メイドが15カ月の幼児を踏み殺して姿を消した。
事件は先週金曜日に起きた。25歳のジャワ島出身のメイドが幼児が病気だとその親に伝えたため、親は近所に住む親族に
病院に連れていくよう依頼、午後4時に親族が家で意識を失っている幼児を発見した。病院に搬送されたものの
到着時には幼児はすでに死亡していた。
検視の結果、幼児の首には絞められた跡があり、脳内には出血が見られ、踏みつけられたようなあざと肺の損傷も発見された。
捜査の結果このメイドは2年近くこの家族と生活しており、両親は幼児が骨折した際に虐待を疑っていたが、裏付けるものは無かったことが分かった。

 この事件自体を知ったのはTwitter上でのことだったが、外国人メイドがトラブルに巻き込まれる(加害者被害者問わず)というのは仄聞するところだったので、言い知れない嫌な気持ちが湧いてくる。

 今回の事件はマレーシアのクアラルンプール近郊で起きたのだが、マレーシアにインドネシアから出稼ぎというのが正直ピンと来なかった。だが、実は一人当たりGDPで3倍近く離れているし、不法就労者が多く問題になっているようだ。もちろん合法的な出稼ぎも多く、2006年の資料だが「インドネシア女性の海外出稼ぎをめぐる諸問題」(PDF)を見ると、インドネシア人の出稼ぎ労働者の実態がまとめられている。多いのは湾岸諸国のサウジやクウェートで、マレーシアは2位である。これはイスラム圏の方が生活慣習などで馴染み易いのも影響しているのだろう。
 ハウスメイドに関しては家の中で外から見えにくいことや、訴え出る先も無いことで、虐待に巻き込まれる例も多いらしい。同じニュースサイトの記事にマレーシアで虐待されたインドネシア人メイドの写真が載っている。前掲の報告書でも多くの聞き取り調査を行っているが、

若いクウェート人たちにレイプされたり,所持品を奪われたりした後,砂漠に遺棄される事件も多発している。

だの

半年間給料をもらえずに家畜小屋に寝起きさせられ,家畜のえさしか与えられなかったという女性(註:シンガポール)

ずいぶん酷い話ばかりである。2009年にはついにインドネシアはマレーシアへの労働者派遣を停止してしまっている。

 とくに単純労働の分野では、その社会の平均的な賃金水準がダイレクトに実収入につながってくる。従って労働力の移動を止めるのは簡単ではないし、シンガポールのように余所から「労働力」を持って来ることでしか成立しない様な社会が出来上がってしまっている場合もある。いやもちろん「外国人労働や救済機関や監視体制を作りつつ門戸開放を図る」という教科書的回答もあるのだけれど、虐待であったり、もしくは冒頭の事件のような感情のもつれは解消できない。ベビーシッターが子供を虐待だの嫁さんが家政婦をいびるなんざありふれた話だけれども、自分の周囲の共同体に組み込まれた人間に対して行うのとその外の人間に行うのでは、後者の方が強度が高いケースが多い気がしてならない。
 
 少なくとも、アイロンを家政婦に押し付ける人間が恐らくは有能なキャリアウーマンだったりするのだろうと考えながら暮らすのは、地獄だな。