ハンス・コパーと造形

パナソニック電工ミュージアムで開催していた「ハンス・コパー展」に行く。

 ハンス・コパーは、イギリスの20世紀後半の陶芸の作家。ドイツ生まれで、ユダヤ人だったので故郷を出て、同じ境遇だった陶芸家ルーシー・リーの工房からキャリアをスタートし、独創的な造形と質感で評価された、という風に解説には書いてある(笑

今回は初期から最晩年まで、100点以上の作品が展示された大規模な展覧会で、最後には彼が影響を受けたルーシー・リーの作品も展示され、比較できるような構成になっていた。

 特に初期の作品は明確にルーシー・リーの影響を受けている(合作もある)のだが、比較してみると違いもある。個人的な印象ではリーの方がフォーマルというか、例えば釉薬を引掻いて線状の模様を描く技法でもリーは明らかに「文様」であるのに対してコパーはより荒々しく、全体の造形を強調するような模様になっている。合作の場合はやはりリーの色が強く出ている、ってか雇い主だからな。

 独立以降の作品では技法上の特徴である、轆轤引きした回転体形状を接合した造形が多く出てくる。典型的なのがボウルを横倒しに二枚合わせて壺の中央部分にした形状である。
轆轤の跡もそのまま、荒々しい印象で、作者も発掘品をイメージしていたらしい。この表面のざらついた質感は水に溶かした泥漿をかけて乾かすことで作られているらしい。どうやってくっつけたのかと思う複雑な形状も多いが、何よりこの質感が古代の作品のような、強い印象を与えている。

 また所謂容器以外の作品も手掛けており、会場でも目立っていたのが「ウォール・ディスク」である。これは陶器で出来たドーナツが壁にはめ込まれているもので、向こう側が筒抜けに見える。学校の壁の飾りらしいが、こういった依頼ものや工業品のタイルのデザインも手掛けた辺りがモダニストらしい。

 最晩年には「キクラデスフォーム」といわれる底の窄まった形状に執着していく。これは恐らく古代地中海世界の「アンフォラ」に影響を受けたのだと思うが、コパーの作品では底を地面に刺すのではなく台座と接合されている。

 最後のルーシー・リーの作品はいかにも彼女らしい鮮やかなものが多かった。どうも観衆の受けもコパーより良いようだ(苦笑)

 東京ではもう終りだが、岐阜や岩手でもやるようなのでご近所の方はぜひ。