「現代工芸への視点―茶事をめぐって」
東京都近代美術館工芸館の「現代工芸への視点―茶事をめぐって」に行く。
茶道具ということで陶芸・金工が主であったものの,それ以外にも香合などの木工品やガラスの作品も置かれている。また茶道具ということで茶室に一式揃いでの展示も目を引いた。
特に印象に残ったのは
小川待子の花活け「U90」は、茶室に置かれていたものだが、コンクリートの塊を突き破るような銀の筒。陶器ではあるが質感は極めて荒く、活けるものを選ばないと弱弱しく見えそう。
また同じ作者の香合は、木片のような鉱物のような、到底意味あるように思われない形状に彫りこまれている。アイディアとしては珍しくないのだろうが、形状全体が非常に美しく、また切断面が見えにくい。
また「これぞ数奇だ!」と感動したのが須田悦弘の一連の木工作品である。これは花や葉を精密に模した木彫で、それが窓の外や、茶室の隅にさりげなく置かれている。
言われないと気がつかないような隠微で、しかし気が付いてしまえば目が離せない作品である。写真は実際の展示ではないが、イメージとして。
メインビジュアルにもなっている長野烈の「唐銅六角捻風炉」も、茶室の雰囲気を破壊せずしかしシルエットはとても鋭い。
まあ茶道具って実はかなり広いので、最初から茶室で使う目的を持っているもの以外でも使える(呂宋壷なんて正にそれ)からかなり広い範囲が含まれてしまうが、今回の展覧会は割りと端正にまとまっていたと思う。もちろん、それは破綻が無くてつまらない面もあるけれど、作品自体の質はとても高い。
ただ問題なのが図録が無いんだよね…製作中ということらしいが。